CSR・SDGs取組み事例

「食」を通じて、人と人、人と地域、人と未来をつなげる

公開日:2023.01.20

更新日:2024.03.27

地産地消コーナー「地縁マルシェ」をきっかけに、生産者と消費者がオフラインでつながれる交流の場をシェアリビング「いまここ」という形で2022年8月にスタートした。
生産者が抱える一次産業の課題解決を目的としつつも「いまここ」の会員が自分のつくった料理をエブリイで販売できる仕組みも今後の展開として視野に入れているという。
スーパーマーケットとシェアリビング。「食」という共通のテーマをもとにした、エブリイの新たな挑戦に見えた。立ち上げから4ヵ月がたった12月、立ち上げの背景とスタート後の感触を聞いた。

話し手:
株式会社エブリイ 営業本部 商品部 生鮮第一部 産直部門 統括マネージャー/新規事業統括 羽原 裕二 さん(写真左)
株式会社エブリイ 営業本部 DX推進室 DX推進担当/生鮮第一部 産直部門 コミュニティ事業担当 櫻井 理紗 さん(写真右)

企業紹介

株式会社エブリイ

株式会社エブリイ

広島、岡山、香川エリアで店舗展開をする、スーパーマーケット「エブリイ」。本部での中央管理ではなく各店舗に権限を移譲する「個店主義」を貫き、野菜や鮮魚などの仕入れ、惣菜づくりに至るまで、地域のお客様の好みを知る各店舗のスタッフが行なっているのがこだわり。また2010年にスタートした地元農家との連携による地産地消コーナー「地縁マルシェ」をはじめ、地元飲食店を支える「まちメシ」など、地元との交流を重視した個性的な取り組みも注目されている。

地元生産者さんとのコミュニケーションの中で気づいた課題が、「いまここ」立ち上げのきっかけに

ーー「いまここ」を立ち上げたきっかけについて教えてください。

 羽原裕二さん(以下、羽原):「いまここ」を立ち上げたきっかけは、弊社の地産地消コーナー「地縁マルシェ」での経験が元になっています。2010年にスタートした「地縁マルシェ」では、現在約3500名の地元生産者さんにご登録いただき、農産物はもちろん加工品なども広く展開しています。他社でも同様のコーナーを導入しているところはありますが、弊社では店舗ごとに担当スタッフを定めており、生産者さんとの深い関係性が築けているところが大きな特徴だと思っています。
 そんな日々のコミュニケーションの中で気づいたのが、生産者さんの農産物に対する想いやこだわり、お客様の生の声がお互いに伝わりづらいこと、そして後継者不足などの課題を抱えている生産者さんが多いこと。現在はコロナ禍でオンラインでのつながりが主流ですが、「食」をきっかけに生産者さんとお客様がオフラインで直接つながれる、交流の場を作りたいと考えるようになったことが「いまここ」立ち上げのきっかけとなりました。

料理教室や農業体験など、「食」を通じた多種多彩なイベントを企画

ーー「いまここ」の仕組み、特徴を教えてください。

 櫻井理紗さん(以下、櫻井):「いまここ」は「食」を通じて、人と人、人と地域がつながることができる、会員制コミュニティ型シェアリビングとして2022年8月1日にオープンしました。

 ご入会いただくと、大きく分けて5つの特典があります。特典の1つ目は「いまここ」施設の「コミュニティスペース」を自由に使えること。火曜日から日曜日(10時〜17時)はいつでも使用することができ、スイーツやドリンクを自由に食べたり、食材を持ち込んだりして料理をすることができます。会員さん同士で集まってランチを作って食べたり、夕食の一品を作ったり子どもたちが遊んでいるのを見ながら親御さんたちはお茶をしたりと、皆さんうまく活用していただいています。

 特典の2つ目は、世羅町にある弊社の自社農場「エブリイふぁ~む」の一角に設けたコミュニティ農園で、種まきから収穫まで一貫した農業体験ができるということ。自分で育てた野菜をコミュニティスペースで調理したり、分けて持ち帰ったり自宅で調理して、そのレシピを共有してくださる方もいるんですよ。

 特典の3つ目は、地域の生産者さんと交流できるということ。生産者さんをコミュニティスペースに招いてのイベントの開催や、会員さんが田んぼや畑に訪問して農業体験をしています。この交流を通じて、会員さんは生産者さんの作物を育てる上でのこだわりや想いを、生産者さんは買い手の「生の声」を聞くことができます。

 特典の4つ目は「いまここ」で開催されるイベントに参加できるということ。月に10回ほどのペースで企画しており、生産者さんが教える加工品づくりから、プロの料理人を講師で招いての料理教室、エブリイの各部門担当者による食べくらべ企画まで「食」にまつわる多種多彩なイベントを行なっています。エブリイの「まちメシ」コーナーに商品を出品してくださっている台湾の料理家の方が作るルーローハンづくりや、スパイスから作る本格カレーづくりなど、本場の「食」を知ることができるイベントも好評です。

 そして特典の5つ目は「好き」や「得意」を活かせる活動ができるということ。会員さんの「やってみたい」という想いからイベントを企画しています。その方の好きなこと、得意なことで輝いてもらえる舞台として「いまここ」を活用していただきたいと思っています。

農業体験や食育イベントを通じて、地元の食材・加工品に親しみを感じてくれる方が増えた

ーー8月にスタートされて、これまでの感触を教えてください。

 羽原:会員数は2022年12月の時点で約100名。立ち上げ時から「食」への関心が高い方が多く入会してくださり、まずまずのスタートが切れたと思っています。今後さらにコミュニティの規模を拡大し、内容の充実を図っていくことが私たちの短期的な目標です。

 また、コミュニティ立ち上げから4ヵ月が経ち、私たちが思っている以上に地域や「食」に関心が高い方が多いことに驚かされました。会員さんから「いまここ」で開催する企画の提案や運営のアドバイスを頂くこともあり「いまここ」を大切にしてくださっている気持ちを感じて大変嬉しく思っています。

 櫻井:現在は親子で入会してくださる方が多いのですが「食」に興味のある方がお一人で参加される場合も少なくありません。これまでイベントを通じて、会員さんから「おうちで子どもたちが料理を手伝うようになった」や「これまで食材にこだわっていなかったけれど、農業体験をした農家さんの顔が浮かぶようになった」など、嬉しい声をいただいています。
 例えばピーマンの農家さんと、地元のソースメーカーさんとのコラボ企画で、ピーマンの肉詰めを作るイベントを開催した時には、ピーマンが苦手なお子さんが「ピーマン美味しい!」と言ってくれるように。地元で作られた野菜や加工品など一つ一つに、少しずつ親しみを感じてもらえるようになっていると感じています。

 羽原:また、農業体験に協力していただいた生産者さんからも、非常によい反応をいただいています。「日々誰とも話すことなく農業に取り組んでいるので、農業体験で訪れた会員さんに、作っている作物へのこだわりや工夫していることなどを話せる機会があると嬉しい」と。

 櫻井:普段は直接買い手の意見を聞く機会がそう多くない生産者さんもいると思うんですが、「美味しかったよ」や「こんなレシピで食べました」という声を直接聞けるのが嬉しいという声をいただきました。

 羽原:「何十年とやってきて、こういう声を聞くのは初めてだよ」って。「そういう声はやりがいになるし、歳をとっても頑張ろうかな?という気持ちになる」と言ってもらえるのは、こちらも嬉しいですね。

自分ブランドのお惣菜やお弁当などの商品開発も実現!

ーー「いまここ」の最終的なゴールをどのように設定されていますか?

 羽原:生産者さんの想いやこだわりを伝えていくこと、そして生産者さん一人ひとりのファンを作っていくことが第一の目的だと思っています。そして将来的には、会員さんと生産者さんの交流がきっかけで、後継者不足などの解消につながっていけたらいいなと思っています。

ーー今後取り組みたいことは?

 櫻井:生産者さんと一緒に「地域の抱える『食』の問題を解決したい」という想いももちろんありますが、まずは会員さんが好きなこと、得意なことで活躍できる場にしていきたいです。実際に「いまここ」で仲良くなった方々から「自分たちが考えたお惣菜を販売してみたい」という声があがっています。今後は私たちがサポートする形で商品化につなげていきたいと考えています。

 羽原:弊社では「いまここ」とは別に、2021年に「みんなのまちメシFACTORY」というシェアキッチンを開設しました。地元飲食店さんがスーパーマーケットにお弁当・お惣菜を出品するには特別な営業許可が必要ですが、このシェアキッチンではその営業許可を取得しているため、どなたでもお惣菜やお弁当の製造にチャレンジすることができます。「いまここ」の2階にも、皆が憧れるようなデザインのシェアキッチンを設けています。ここで作ったお惣菜やお弁当、スイーツをエブリイで販売したり、1日限りのレストランをオープンしたりすることもできるようにしています。

 櫻井:エブリイは「鮮度・美味しさ・価格」に特化したスーパーですが、商品の販売に至るまでの「物語」も美味しさにつながると考えています。生産者さんの顔を思い浮かべて料理をしたり、売っている人のこだわりを思い浮かべて商品を選んだりすると、これまでとはまったく違う思い出になり、美味しさに変わるのではないかと信じています。「いまここ」で「食」にまつわる体験を重ねることで地域の美味しさ・魅力を再発見し、子どもたちが今まで残していた一口を食べ切ろうかな?と思ってくれるなら、それは未来への一歩につながるのではないでしょうか。

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